奇跡事【完結】



「あはは。人から愛されてきた人間ってそうなるのかな。
僕は生憎、愛なんてものは信じないから」


パチフィスタは、きっと誰にも愛されて来なかったんだ。
僕にはマークおじさんがいた。

それに、サーシャとキョウがいつも側にいた。



「憐れまないでよ。悲しくも羨ましくもないんだから。
僕には愛が不要だったってだけ。
きっと、これからもそうだよ。必要になる事はない。
数百年と生きてきたけど、そうだったから。
面白ければ僕はいいんだよ、それで」



僕達がいくら言ったって、きっとパチフィスタの考えが変わる事はないだろうな。
それを押しつけるのはエゴなんだ。



「それに、愛は時として正常な判断を狂わせる。
簡単に闇に堕ちてしまうんだよ。
……呑み込まれてしまったらもう助けてあげられない」



“呑み込まれたら、僕は助けてあげられないからね”



いつかの、パチフィスタの言葉。
誰もが正しく生きているなんて、難しいのかもしれない。


マークおじさんは一緒にいたいが故に、ソアレに呪いをかけてしまったし。
誰もが真っ直ぐになんて生きられない。


それはきっと、僕も。