奇跡事【完結】



……お兄ちゃんを、殺した?


前に死んだと言っていた兄を?


一瞬で、その場はシンっと静まった。
皆が口を閉ざしている。


なのに、パチフィスタ一人笑顔だ。



「何で、実の兄を…、殺したの?」

「わかんない?ルーイ。僕と同じ力を持った、いや、もしかしたらそれ以上かもしれない相手がすぐ側にいるんだよ?
耐えられる?耐えられないよ。僕は一人でいい。分身なんていらない」

「……」


肩を竦め、あっけらかんとした口調でパチフィスタは言った。


狂ってる。
そう、思った。


簡単に人を殺す事が出来るなんて、どうかしてるよ。



「それでも、実の、兄で……家族でしょ?」


サーシャが青い顔のまま、口にするがパチフィスタは目をぱちくりとさせ、声を上げて笑い飛ばした。
おかしな質問だというように。



「実の兄?血の繋がりなんてどうでもいいよ。
僕にとったら僕じゃない他人だもん。それに、僕に家族なんていないよ。
生まれた瞬間に捨てられたからね」

「……っ」


もう、サーシャは何も言い返せないみたいで口を噤む。
下唇を噛んで、震えていた。