奇跡事【完結】


呼吸をする事さえ、憚られる様な空気。


その空気を壊したのは。


「ルーイ!キョウ!?」


サーシャだった。



「サーシャ!来るな!」


キョウが咄嗟にそう叫ぶ。
だけど、それは既にサーシャが姿を見せていた後で。


僕達と、その奥にいる男を見て顔を強張らせていた。



「……サーシャ?」



その男がぽつりと、呟く。



ゆっくりとこっちに近付くサーシャの顔が、段々と月明りに照らされていった。
ハッキリ映し出された顔を見て、その男が目を見張る。


「……」


すぐにその顔が無表情に戻り、喉を鳴らすと

「俺の名はサーティスだ」

そう告げて何か呪文の様な言葉を発すると、スゥッと彼の体が闇に消えて行った。