奇跡事【完結】



「何の用だ」



低くて、自棄に落ち着いた声が響いた。


最初、誰に言ってるのかわからなかった。



僕とキョウは口を結んだまま。
辺りには僕達以外誰もいない。


きっと、僕とキョウに言ってるんだろう。


だけど、口を開く事なんて出来なかった。



少しして、その男はチラリとこっちに視線を寄越す。


酷く、冷たくて鋭い視線に、心臓が大きくドクリと鳴った。



「……何の用だ」



再度、同じ質問を僕達に投げかけるとその男は剣を鞘に戻した。
そんな姿まで、サマになっていて。


ゴクリと僕が生唾を飲み込んだ時だ。


キョウの口が開く。



「俺達の、村を焼き払ったのはお前か」


端的に。
拳を震わせたキョウがそう、彼に返す。


後ろ姿しか見えないから、キョウの表情はわからない。


だけど、キョウのこんな低い声今まで聞いた事ない。
怒りを抑えてどうにか、言葉にしている様にしか見えない。