奇跡事【完結】



目に涙を溜めて、サーシャはマークおじさんに訴える。
息をする事だけが精一杯のおじさんは、一言だけ。



「……サー、ティ、スが」

「……サーティス?」

「ねえ、それって誰!?おじさん!?おじさ……」



カクンと首を支えていた力がなくなる。
もう、マークおじさんは息をしていなかった。


「っ、うう、おじさん」


サーシャは涙を流しておじさんの亡骸にしがみ付く。
僕も呆然とそれを見つめていた。


何も言葉に出来なかった。



その時、キョウが突然どこかに向かって走り出した。



「え?キョウ!?」



サーシャはまだ泣き崩れている。
一人にするのも不安だけど、キョウ一人も心配だ。



「サーシャ、絶対にそこを動くなよ!」



聞いてるかわからないけど、それだけサーシャに告げると僕はキョウの後を追いかけた。


足が速いキョウの後を付いていくのは大変だったけど、どうにか見失わなずに済んだ。
立ち止まったキョウにやっと追い付いた僕は、稽古をサボってる所為かかなり息が上がっていて肩で大きく息を吸う。