「だから、さっき見た老人の夢は自分が出てこないから今は夢だと思っているけど、その夢にはゆみが登場した時点で、幸村さんだっけ? その人の様に夢か現実か区別か付かなくなってるんだと思う。それが、今、はゆみの現状だと医者から説明は受けた。

毎日が繰り返されていると感じるのも、ひどくなるかもしれない」

本当にそうなんだろうか?

「はゆみが俺とつきあっていたことを忘れているとわかったとき、俺……」

かなくんは黙り込んでしまった。


自分の愛する人がいなくなるわけではなくて、そこにいるのにいないという状態。忘れるというのは酷く残酷なことだ。


思い出せたのかというと、そうじゃない。

私は、今、かなくんを愛おしいと思っている。

だけど、どうすることが正しくて、どうしていくことが良いのかが、私はまったくわからないでいる。

過去も未来もどうでも良いと思えるほどに今は、私の胸の中で泣くかなくんを愛おしいと思っている。