私の話を全部聞いてくれたかなくんは私の病気のことについて知っていることを全部話してくれた。

私の脳に出来ている腫瘍は電気信号を遮断したり違う場所に継げたりするらしく、それが丁度、時間の概念を処理する部分であるらしい。

たとえば、物事が起こる前なのか、これから先に起こることなのかがうまく理解しにくいのはこの腫瘍がある為で、順番がわかない。

この説明も、説明を前に聞いたことがあると感じたりするぐらい。

ただ、これから先のことがわかるわけではなくて、現象の前後を上手く把握できないでいる状態らしい。

さらに、ある記憶がごっそりと抜け落ちたり、そうかと思えば妄想や空想の境界線がなくなるという深刻な精神疾患で統合失調症の入り口に今は立っているらしい。

この腫瘍が脳の表面に近いところであれば、その腫瘍を経由せずに神経細胞の伝達ルートは腫瘍を迂回するようにして処理するといういわゆるバイパスが発達することで日常生活に差し支えないぐらいに回復することもあるが、今回のケースは腫瘍が脳の奥の方にあるためどうしても、腫瘍のある部分を経由せざるを得ない。

特に、脳の神経細胞ではないグリア細胞を飛び越えるようにして電気信号が伝わる跳躍伝導の信頼性においては腫瘍のある場所は大きな障害となった。