***
醤油のたっぷりしみこんだ畳の上で、男は大の字になって寝転がっており、老人はその傍で丸くなって寝転がっている。
男は天井を見つめながら老人に語りかけた。
「昭蔵さん、さっきはゴメン」
老人は黙ったままだ。
「やりすぎた。ごめん」
男は老人の方に寝返りを打って老人の手にそっと触れた。
「どうしても、アレ、やめてくれないのか?」
老人は、首を横に振った。どちらの意味とも取れた。
「教えてくれないのか、なんでこんなことをするのか?」
醤油のしみた畳を指でなぞりながら男は老人に尋ねた。
「もうわしに……」
そこまで言いかけたクチを塞ぐようにして男の伸ばした片手が老人の両頬を、ぎゅうと掴んだ。
老人の顔は蛸のようになってしまったから、男は優しい顔をして笑って言った。
「俺が、かまいたいんです。 俺が知りたいんです」
老人はやれやれと首を小さく振ってから男の手を握りかえしてから、男に語りはじめた。
「昔、近所に権堂さんという先輩がおってな……」
醤油のたっぷりしみこんだ畳の上で、男は大の字になって寝転がっており、老人はその傍で丸くなって寝転がっている。
男は天井を見つめながら老人に語りかけた。
「昭蔵さん、さっきはゴメン」
老人は黙ったままだ。
「やりすぎた。ごめん」
男は老人の方に寝返りを打って老人の手にそっと触れた。
「どうしても、アレ、やめてくれないのか?」
老人は、首を横に振った。どちらの意味とも取れた。
「教えてくれないのか、なんでこんなことをするのか?」
醤油のしみた畳を指でなぞりながら男は老人に尋ねた。
「もうわしに……」
そこまで言いかけたクチを塞ぐようにして男の伸ばした片手が老人の両頬を、ぎゅうと掴んだ。
老人の顔は蛸のようになってしまったから、男は優しい顔をして笑って言った。
「俺が、かまいたいんです。 俺が知りたいんです」
老人はやれやれと首を小さく振ってから男の手を握りかえしてから、男に語りはじめた。
「昔、近所に権堂さんという先輩がおってな……」



