さおりんは、唇を噛んで私の方を向いて頷いてくれた。
恥ずかしいので、唇を眺めて話し出した。
「幸村さんがいる世界線から来た私が、この幸村さんのいない世界線にいる私という容器に収まっている状態が、今の私だと思っているのね」
最初に感じた、理性と本能の混在ではなく同居という部分がそれに当てはまる。本能的には、この世界線の木下はゆみではあるが、理性は完全に別の世界線の木下はゆみなんだと思う。
「はゆみの中に2人いるということ?」
「たぶん。
それで、問題は、今日が繰り返されているという現象なんだけど」
「今日が繰り返している?」
ああ、とうとう言ってしまった。
「そう、さおりんに私が、昨日話したことは、私にとってはここで昨日話したことで……」
「ちょっ、ちょっと待って」
さおりんは上を向いて、手で顔を覆っている。無理もない。私だって訳がわからないんだから。
ごめん。



