灰皿を運び終えて振り向くとメガネを外した幸村さんが居た。
目の焦点が合ってない潤んだ瞳。ずいぶんと幼く見えた。
メガネ常備の人にとって、メガネを取った顔を見られることは下着を取られるよりも恥ずかしいと聞いたことあるのだけど。
「キノさん、このメガネかけてみてよ」
と、焦点の合わない目を下にそらして、ニコリと笑った。
「へ? メガネですか?」
レンズに指紋が付かないようにそっと受け取る。
「秘密の交換だよー。 まぁ、かけてみてよ」
かけると驚いたごとに、ものすごくモノの輪郭がハッキリと見えた。
リアルよりもリアルだと驚く私に幸村さんは遠くのほうにある灯りがついたコンビニを指差して、あれ、あれと無邪気に笑っている。
指先の景色を見ると、グン! と、耳に乗っけている部分がわずかに振動すると同時に音が鳴り、すぐに焦点があった。
大学生ぐらいなのかな、店員の男の子が、女の人から5千円札を受けとって勢いよく頭を下げているのがハッキリと見えた。
驚いて幸村さんの方を見るとまた、ギュン!と音が鳴り幸村さんの顔にピントが合った。
少しぽってりとした唇が丸く小さな開け、だんだん大きく開いていった。
唇が開いて何か言い始める顔の微妙な動きの連続をメガネをかけた私の目と脳がヒトコマも逃さずに完全にとらえて記憶していく。
「とーさんから、もらったのです」
眼鏡をかけた私も、“とー”と、発音するクチをしたままに聞いた。
目の焦点が合ってない潤んだ瞳。ずいぶんと幼く見えた。
メガネ常備の人にとって、メガネを取った顔を見られることは下着を取られるよりも恥ずかしいと聞いたことあるのだけど。
「キノさん、このメガネかけてみてよ」
と、焦点の合わない目を下にそらして、ニコリと笑った。
「へ? メガネですか?」
レンズに指紋が付かないようにそっと受け取る。
「秘密の交換だよー。 まぁ、かけてみてよ」
かけると驚いたごとに、ものすごくモノの輪郭がハッキリと見えた。
リアルよりもリアルだと驚く私に幸村さんは遠くのほうにある灯りがついたコンビニを指差して、あれ、あれと無邪気に笑っている。
指先の景色を見ると、グン! と、耳に乗っけている部分がわずかに振動すると同時に音が鳴り、すぐに焦点があった。
大学生ぐらいなのかな、店員の男の子が、女の人から5千円札を受けとって勢いよく頭を下げているのがハッキリと見えた。
驚いて幸村さんの方を見るとまた、ギュン!と音が鳴り幸村さんの顔にピントが合った。
少しぽってりとした唇が丸く小さな開け、だんだん大きく開いていった。
唇が開いて何か言い始める顔の微妙な動きの連続をメガネをかけた私の目と脳がヒトコマも逃さずに完全にとらえて記憶していく。
「とーさんから、もらったのです」
眼鏡をかけた私も、“とー”と、発音するクチをしたままに聞いた。



