「は、はい!」
慌てて灰皿を片手で持とうとすると結構重くてビックリした。真似するもんじゃないなと両手でしっかりと持ち直す。
すると幸村さんは、灰皿スタンドを掴む私の手を上から握って耳元で
「そこじゃない」
と、やさしく、つぶやいた。
ぞぞぞと背中に何かが、走る。
「モノを持ち上げるときは、そのモノの重心を見るの」
「はへ?」
「まず、モノの形をよく見る」
「は、はぁ」
そう言われてよく見ると、いびつな形をしている。ウチの会社は、灰皿までイチイチおしゃれだったりする。
「どう?」
「どうって……」変な形をしていますねとしか、思わないな。
「偏重心なのよコレ。灰皿のクセにね」
「へんじゅうしん?」
二回頷いた幸村さんは「center of gravity」と、ネイティブすぎて聞き取りにくい英語を言った後、金属で出来たスタンドの思ったよりも上の方を指差した。
薄いパープルグレーに塗られた長細い爪をコツコツと鳴らした。
重心とか、もう、そんなものはどうでも良くて紫色なのか灰色なのかが気になって仕方がないし、真似をしたいなと思いました。
慌てて灰皿を片手で持とうとすると結構重くてビックリした。真似するもんじゃないなと両手でしっかりと持ち直す。
すると幸村さんは、灰皿スタンドを掴む私の手を上から握って耳元で
「そこじゃない」
と、やさしく、つぶやいた。
ぞぞぞと背中に何かが、走る。
「モノを持ち上げるときは、そのモノの重心を見るの」
「はへ?」
「まず、モノの形をよく見る」
「は、はぁ」
そう言われてよく見ると、いびつな形をしている。ウチの会社は、灰皿までイチイチおしゃれだったりする。
「どう?」
「どうって……」変な形をしていますねとしか、思わないな。
「偏重心なのよコレ。灰皿のクセにね」
「へんじゅうしん?」
二回頷いた幸村さんは「center of gravity」と、ネイティブすぎて聞き取りにくい英語を言った後、金属で出来たスタンドの思ったよりも上の方を指差した。
薄いパープルグレーに塗られた長細い爪をコツコツと鳴らした。
重心とか、もう、そんなものはどうでも良くて紫色なのか灰色なのかが気になって仕方がないし、真似をしたいなと思いました。



