地球の三角、宇宙の四角。

記憶が飛んでいる間のことを説明することはどうしてもできなかった。映美は知るべきなんだろうか? あの看護師も医者も気が付いていないのだろうか、前を知らないと比較できないから仕方がないのか。

「かなくん、仕事は? 大丈夫なの?」

「さぁ、どうなんだろうか、大丈夫ではないと思う」

と、笑うしかない。

「大きい会社だからね、1人ぐらい居なくても」と言いかけたとき映美もそうだということに気が付いてむにょむにょと語尾をぼかした。


「やっぱり、あたし病院にもどるよ、かなくんも会社に戻って」

「わかった! わかったけどさ、昼ご飯ぐらい一緒に食べない? ホラ」

目に付いた高そうなホテルを指差して、ランチが食べたいと説得をした。

「そこのロイヤルホストとか、あそこの中華料理とかでいいよ」

「とかとか言うなよ、中華料理屋の中の人だって一生懸命がんばってるんだよ」

「いや、そうじゃなくて、こんな格好だしさ」

「じゃぁこうしよう、服は買ってくるから」

「なんで、そんなに必死に」

ホラいこう、ホラと手を引っ張ってホテルまで向かう。性欲の固まりの高校生のような顔をしていると思う。

「チェックインをすませたらさ、部屋の中で待ってよ、すぐ服は買ってくるから」

「ええ、いいよー恥ずかしいから、いいって、お腹空いたし、もう」

「すぐ戻ってくるから」

「サイズとかわかる?」

「FとかMで大丈夫なんじゃないの」

着せてみたかった服があるんだとかなんだとか言いながらホテルの入り口を入ると、奥にフロントが見えた。待たせてフロントに記帳しに行き、名前を書き込んだあたりで振り向くと、映美は男の人に腕をもたれて立ち上がらされてる。