背中が縫い終わり、マキちゃんの顔から不安の色が消えてパッと明るくなった。さっきまでと変わってないだろう部屋に差し込んでいる日差しの強さに、今頃になって気が付いた。
ついさっき、人が1人消えた空間なんてことが、信じられない。おだやかで、やさしい天気。
現実に起こるべきではなかったことを、なかったことにすべく、“なにかの間違いで出来てしまった穴”を執刀医は針と糸で塞いでいく。
これでいい。なにもかも元通りになればいい。なかったことになればいい。こんなにも、なにもかもが普通に静かに流れているじゃないか。
ふわふわくんのお腹を猫背で裁縫をする映美を見ていると自分の母親のことを思い出した。
といっても裁縫している母親なんか見たことがない。イメージとしての母親だ。実際の母親は、中学二年で家を出て行った。
あれ以来、女の人というのは信頼してない。捨てられた、裏切られたというふうには憎めなかった。
どうでもいいやと思う方が楽だったのかもしれない。
だから、今でも怖くて依存なんかとてもじゃないけど出来ない。映美との付き合いも新しいゲームを始めるみたいな感覚だった。誰でも良かったのかもしれない。
いま、何となく分かるのは、深入りすれば、その深さ分だけ酷い目に遭うのを知ってしまってるから怖かっただけなんだろうなと映美の姿を見ながら思う。根性無しめ。
ついさっき、人が1人消えた空間なんてことが、信じられない。おだやかで、やさしい天気。
現実に起こるべきではなかったことを、なかったことにすべく、“なにかの間違いで出来てしまった穴”を執刀医は針と糸で塞いでいく。
これでいい。なにもかも元通りになればいい。なかったことになればいい。こんなにも、なにもかもが普通に静かに流れているじゃないか。
ふわふわくんのお腹を猫背で裁縫をする映美を見ていると自分の母親のことを思い出した。
といっても裁縫している母親なんか見たことがない。イメージとしての母親だ。実際の母親は、中学二年で家を出て行った。
あれ以来、女の人というのは信頼してない。捨てられた、裏切られたというふうには憎めなかった。
どうでもいいやと思う方が楽だったのかもしれない。
だから、今でも怖くて依存なんかとてもじゃないけど出来ない。映美との付き合いも新しいゲームを始めるみたいな感覚だった。誰でも良かったのかもしれない。
いま、何となく分かるのは、深入りすれば、その深さ分だけ酷い目に遭うのを知ってしまってるから怖かっただけなんだろうなと映美の姿を見ながら思う。根性無しめ。



