地球の三角、宇宙の四角。

友人に電話をすると二つ返事で病院まで取りに来るとのこと。丈夫で頑丈な営業車は値段が落ちないらしい。

ふと、遠くに赤いワンピースを着た黒髪の幼女が立っていた。

手には白い熊のぬいぐるみを手を繋ぐように持っており、嗚呼なんとも絵になる幼女だなと感心してると、焦点の合わない目をしたままゆっくりと歩き出して目の前を通り過ぎようとしていた。

あんまりジロジロ見たらいけないと思い、またiphoneを触っていると車の件をさきほど何とか解決させたした徒労感からか喫煙所に行ききたくなり立ち上がった。

すると、すぐそばに幼女がいるのでドキリとしてしまう。


「あ、びっくり。どうしたの」

少女は僕の後ろを見ているような目をしながら少しだけ首をかしげた。

「お嬢ちゃん、お名前は?」

「名前……は?」

小さな声でボソボソと返す。

目線が会うようにしゃがんでからもう一度聞いてみることにした。

少女は少しだけ目が大きくなって数回瞬きをした。

「かわいいね、お名前は?」

これ、町とか公園とか、男風呂の中なら、めちゃくちゃ不審者で一発退場だろうな。病院もそんなに変わらないのかな。

「名前は?」

小さなくちを少しだけ開いて、ささやく様にまた聞き返された。

「奏多。しょうたに、かなた」

「かなた」

「そう」

「そう」

ボソボソと小さなくちをほとんど動かさずに喋る幼女、一体なんの病気なんだろうか? おそらく酷い目にあったのだろう、新しいお父さんだとか新しいお兄ちゃん、近所の浪人生……ほんとに、こんなきれいな顔をしているのにゆるせんな。

目には全くチカラがなく、笑ったらすごくかわいいのだろうなと、ちょっとだけ頑張ってみることにした。


「その子は何て言う名前?」手を繋いだ白クマを見ながら聞いてみた。

「名前」

「そう、そのクマさん」と、ゆびをさしていうと


目に輝く利の光が差し、頬に少し赤みが差した。

「ふわふわくん」

もの凄く小さな声で照れながら言う

「ふわふわくんか、かわいいね」

「かわいい」にっこりと笑った。

「さわらしてよ」

「だめ」

取られまいと両腕で抱きしめるようにして拒否られる。

そして、イタズラっぽく意地悪そうに笑った。