地球の三角、宇宙の四角。

映美をベットに寝かせ、ナースに声をかけて廊下へと連れ出した。

手術を1日だけ延ばしてくれないかと無茶苦茶なことをあたりまえのように事前に決まっていたかのように言った。

無理を通すときの交渉では、自分がそうなるのが当たり前だという強い気持ちで話さないと通せない。

言葉を選ぶセンスなんかじゃない。言葉に強さをどれだけ乗せられる事が出来るかだ。

ぽーっと酔ったような顔したナースはそのまま「ここでお待ち下さい」と一礼をして走っていった。

その後ろ姿を見ながら、突然話しかけて来るiphoneの事が気になって触ったり、話かけてはみたが、まあ普通のiphoneで、未読のメールが1件はいっているので見てみるとカードの請求でため息をついた。

病室に戻ろうかと思ったが、壁にもたれてiphoneのアプリをかたっぱしから起動させてみることにした。

もしかしたら、これかなと“ホモォ”育成ゲームも立ち上げてみたが特に何の変哲もなく、薄い本を3冊ほどあげた。

画面の“ホモォ”は嬉しそうに「ホモォ」と鳴いた。

次に今、映美のアイデアで、しぶしぶ書き始めたネット小説のPV数と読者数を確認したが、変化が全くなし。

病室を覗くと、布団を顔半分までかけて大人しくしている。寝ているんだろうか。

手術でどちらも失うのが嫌だったというわがままと、はゆみちゃんが消えてしまうのじゃないのだろうかという不安が本音で、建前としては知りたかった。それと他の選択肢がないかあるのじゃないのだろうか、という淡い期待。

もう一度iphoneを見てみるが何もない。会社に電話を入れる。

車が盗難されたと。

車を海外行きのルートを持つ有人の顔、タンカーに営業車を乗せて、東南アジアで元気よく走る姿を想像しながら。

とんでもないことを平気な顔してべらべらと話す。

「保険会社の手続きと、あと情報漏洩の心配は奇跡的に回避してますので」

だとか本当にすいません。


色々な意味で。