地球の三角、宇宙の四角。

自分でナースコールを押した瞬間に映美の顔つきが変わった。

雰囲気とか顔つきでこうも違って見えるのかなと驚いた。

変わったというのは少し違っていて、元に戻った。僕のよく知る映美に戻った。その時はそう思った。

そして今、目の前にいる膝に頭を乗せた映美は僕のよく知る、昔から知っている映美なわけで……。

そう、彼女は、“はゆみちゃん”は、現れたり消えたりする。1人の人間の中に2人いるように。

昔に見たブラッドピットの映画「ファイトクラブ」のように。

「どうしたの難しい顔して?」

「ええ、ああ」

そんなことなんてあるわけがないか。


「かなくん、会社は?」

「……ああ、そうだね、抜けてきた」

「大丈夫?」

「映美こそ、大丈夫か」

「……ごめん、おぼえてない」

と頭を押さえている。

「頭打った?」

と彼女の目を見つめる。すると彼女も見つめ返す。

首を振る彼女。

僕はその目の奥を見ようとしていた。