地球の三角、宇宙の四角。

寝癖の男に食ってかかるようにしてかなくんは私の前に出た。

「あんた何」

最近は見たことのない怖くて嫌な顔をしているのが背中越しでも分かる。

寝癖男はにやにやしながら「へ? なんだろうねぇ」と行った途端黙り込んで怖い顔になった。

見つめ合う2人を見ていると、殴り合いが始まるんじゃないかと心配になり、服を引っ張った。

最初に口を開いたのは寝癖の男。

「上からは、その子持って帰ってこいと言われてる。ひどいと思わないか?」

「はあ?」

「でも、全力で見逃してやるよ。これでも人権派なんだ、かわいい女の子にだけだけどな」

ああ、ホッとした。この寝癖の人の事は嫌いじゃないのかもしれない。だけど言ってることが全然わからない。人権派?

「はあ? 見逃すも何も関係ないだろう。何なんだよ」

「庄谷さんには関係ないですよ。関係あるのは木下さんだけ。病院行くんだろう? 止めやしないよ。行きなよ」

なんで名前を知っているんだろうか、ハスキーで少し甲高い声の寝癖の男は手を挙げてひらひらと振った。

「あれと何か関係あんのか?」

店内に視線をズラしてかなくんが言う。

店内では関口さんが走り回ったり跳んだりしている。

寝癖の男は何回か頷いて、「そうだね。そうだな。アンタに邪魔されて取り逃がしたってのもいいのかもなッ」と、いきなり殴りつけた。

「それがいいストーリーだ」と膝蹴りを喰らわせる。不意打ちを食らったからか一方的にやられてて、私はなにもできなくておろおろするしているわすかな間に、バタンと地面に倒れ込んでしまって、気が付けば「かなくん、かなくん」と膝をついて呼びかけてる。

上から男の人は「ちょっとの間、息が出来ないだけだ。さっきのメモ。今は意味がわかんないと思うけど、そのうちわかる」といって店内へと戻っていった。

いつもこうだ。いつもこう!

楽しいなと思った後にはいつもこう。そう思うとうるうるときた。さっきは泣こうとして泣けなかったのに、勝手にうるうるとする。