地球の三角、宇宙の四角。

「まあ、落ち着けよ」なんて関口をなだめ周囲を見渡す寝癖の男とも目があって、少し照れ笑いをしてから会釈をするものだから、会釈をして返した。

「お、落ち着かせるのは君かもしれないけど、落ち着かないね。ああ、落ち着かないなー」と、その場で足踏みをしながらそわそわとしている。

ここが病院の近くのファミレスだからか、それとも都会だからだろうか、あまりにも周囲は無関心、もしくは装っている。

「じゃぁ、こうしよう関口、メスの猫をもう一匹な、もう一匹飼おうぜ、そうしよう」なんて説得している。

関口は頭をかきむしりながら違うそれは違うんだよと続ける。

「違う。違う。全然違う。そうじゃない。そこじゃない。ちがう。全然違う。最後まで話を聞け」そわそわと動いていたピカピカに光った黒いローファーがソファーを踏みつけて、両足がソファーに乗った。

ソファーの弾力を面白がるようにしながら関口と呼ばれる男が話し出すと、寝癖の男の人は猫が匂いを嗅いだ後にするフレーメン反応のような顔をしながら半開きのクチで見上げている。

「キンタマをなめられたいと思うのと同じように、私はキンタマをなめようと思うのです」

目の前のかなくんも、もう完全に後ろを振り返ってどんな奴が話しているのかをそのまま見てる。

いよいよ店内もざわざわしだして、背の低いまじめそうな店員が関口に近づいてくる。気になるのはこういうときのマニュアルというのはあるのだろうか。


「男とか、女とか、皮膚や、目の色なんて関係がないのです。想像してみて下さい。そして疑って下さい。是非疑って下さい」

なにが、疑ってくださいなのか。彼はこの店の全員にたいして話をし始めている。

近づいた店員に対して奇声を上げて背もたれの部分に牛若丸のように飛び乗り「お客様」という声と同時に私のテーブルに黒いローファーが着地した。