「かなくん、あのね……」

何かを言い始めたいと思って、言葉にしてみたものの、伝えるべき中身は無いからなのか言葉に詰まった。ただ、この人に何もかもを委ねたい。いろんなこれからの“どうしたらいいのか?”という選択肢を決めて貰いたい。そういう想いで“私から”の言葉を探した時に私が見たのは、私の続きの言葉を待つかなくんで。かなくんは子犬のような目で、だからなのか、ますます次の言葉が出てこなかった。

耐えきれなくなり、ふと目線を落とすと彼の胸には無数に散らばるホクロがあり、これはきっと病院からの記憶で、それ以前に見たことがなかったように思う。

触れてみると随分前からそれに触れていたという感覚に包まれるが、違っている。そうじゃない。たぶん、そういうのじゃない。私から彼に触れて、私がわかった風になるのは違う。それは違う。やはり私から“これから、どうしたらいいのか?”ということが聞けなかった。私からは。