服を脱がされている最中に、さっきまではなかったものが視界には、飛び込んで来た。壁際にひっそりと立ち尽くしている少女がいた。

目の錯覚かと、視線を一旦ボタンに手をかける彼の指先を見つめた。彼の指先は小刻みに震えていた。

震える指先を触りながら、恐る恐るもう一度見てみた。

壁際にはやっぱり少女が立っており、千鳥格子のワンピースを着ている。

そのワンピースは私が中学生か高校生、その間ぐらいによく着ていた服だ。

その私のお気に入りだった服を着ている少女が物憂げな表情で私のことを見ている。

これはどっちかというとお化けみたいなものなのだろうか?

千鳥格子の服を着た頃の私なのだ。

その私がクチをひらく、表情の無いまま何かぼそぼそとクチを動かしているが、私の耳には何も聞こえなかった。

暫くすると何か言いたそうにこっちを見ている。

言いたい事は、だいたい判る。

そうだよ、おねぇさんはイケナイ事をしていますよ。ええ。

自分の事を知らないというかね、勘違いして、間違ってて、とにかく私ではないというか……、私によく似た人の事が好きな男に、私はこうして、服を脱がされて、身をよじっているのわけ。抱かれようとしているわけ。

そう考えを伝えようとしただけで少女は目を細めた。不潔と言わんばかりに。

不潔じゃないわよ。綺麗でもないかもしれないけど。

少女はクチを尖らせた。(なんで? って事?)

ブラのホックを外されて、彼の手のひらが、背中に張り付いた。

少女は、小さな声を上げた私を見て睨むから、私は彼女から目をそらせないでいる。

なんでかって?

愛されているからですよ!

あのね、おねぇさんね。病院では医者に「おまえは頭の病気」だとか言われるし、母には泣かれるし、きちがいに話かけられたり、場面がぽんぽん飛ぶしで、とにかくストレスが、ものすごいわけ。ね。それを解消させておるのですよ。

あんたもオトナになればわかるよ。

あのね、“お前の事が好きだ!” “わたしもよ!”

“ちゃんと言えよ”、“私も好き!” がしっ!なんてね、ただの勘違いなんだよ。

ほんとだよ?

私は今ね、全力でこの人の事を好きなってるの。本当に。

だからそんな顔しないで。

と、少女に問いかけいるまさに同時刻には、彼にあちこちをこねくり回されてはいるわけだけど、さらに少女の表情が変わって何か言いたそうな顔が気になって気になって仕方がないでいた。

そんな目で、こっちを見るのはやめて。

この男の人が、私の事をもっとちゃんと見てくれれば良いわけでしょう?

大丈夫だから! 心配しないで。

そう伝えると、ぷいと後ろを向いて走っていって壁の中へと消えていった。