地球の三角、宇宙の四角。

まぁ、それでも【腐女子が読みたいBL大賞作品】である“しょうゆさん”を仕事中に読んでいた私の給料をさ、コイツが稼いできてるということぐらいはなんとなくは分かっている。

いや、なんとなくではなくそれは概ね事実ではあり、自分が頼まれたことをしてないものも事実。

だってさ、しょうゆさんがなぜ醤油を買いに行くのかが気になったんだから仕方ないじゃないか?

なんだよ、あのピッ158円です。とかいうやつ。
昭蔵さん(しょうゆさん)がキャッシュトレーに百円玉二枚を丁寧にそっと置いた、その、しわくちゃの指先が、ボクのおつり渡す手をぎゅっと握り返した。なんて神描写に、あたしのウブなハートはわしづかみにされましたよ。ええ。あとアレ何? 審査委員の天才売れっ子BL作家 花山吹 純(小6)が大絶賛してたからな、そりゃ気になるでしょう? 

「で、どうすんの? 時間だからって帰るの? 今日中にはまとめて富永さんにメールしときたいんだけどさ」

いやみったらしく言い放った後、黙ってる私を鼻で笑い、芝居じみたトーンで幸村さんを呼びつけた。

「幸村!」

呼ばれた幸村さんは返事もせずに立ち上がると、モデルのような姿勢で課長のデスクへと向かった。