「なんでだよ。」

 俺は無理やり顔を上げた。

 えっ?

「なんで泣いてんだよ。」

 結奈の顔を見ると目を真っ赤にして泣いていた。

「なんでもないよ……。」

「何でもないわけねぇだろ?」

「……め、目にゴミが入ってなかなか取れなかったから涙がすごくでちゃって!」

 結奈はアハハと笑いながらいった。

「ゴミが入ってもそんなに泣かないだろ。」

「……。」

 結奈はとうとう喋らなくなった。

「結奈?どうしたんだ?」

 俺はこれ以上ないくらい優しい声で言った。

「…っ、何でもないってば!」

 結奈は俺を突き飛ばし、屋上から出ていった……。

「何があったんだよ……。」

 俺は誰もいなくなった屋上でただ俯いているしかなかった──……。