―――“林美波”―――


俺の頭の中は彼女の事で一杯だった。


触りたくなる様な綺麗な髪。


近付きたくなるほど誘われる香り。


目が離せなくなる大きな瞳。


運命の(と俺は勝手に思っている)

教科書販売の日から数日が経つ。


どうにかして

彼女に逢いたいと思うのだが、

始まったばかりの大学生活、

俺にはそんな時間と

心の余裕がなかった。


「はぁ……」


周りの空気を重くしてしまうような

深い溜息が自然と漏れる。