夏物語

家に帰るとお父さんが「今の話は母さんに内緒な」と言ってきた。




私は頷くと、いい匂いがするキッチンに向かった。




「お母さん今日の晩ご飯何ー?」



あれ…

キッチンで包丁をトントンしているのは、お母さんじゃなくて薫くんだった。



「今日はね、オムライス。それよりお父さん。今日何の日でしたっけ?」



お父さんは何かにハッっと気付くと、あわてて飛び出していった。



「何の日なんですか?」



机にホカホカの綺麗なオムライスを並べながら、薫くんは少し笑った。



「知らないの?今日は雛のお父さんとお母さんの出会った日なんだよ?二人で明後日まで温泉旅行らしいよ。」



知らなかったー。



お父さんとお母さんは高校生の時から付き合ってるらしいから、もうかれこれ20年にはなる。



「俺たちもそんな夫婦になれたらいいね。」



「結婚するんですか!?」






「もちろん。」