鬼龍‐金色の覇者‐



延びた男は警察に起こされるか不良どもに喝上げされるか。

龍たちの知ったことではないので、裏路地に放って置いた。



「気にしなきゃ良いのになぁ…。」



もちろん茨輝に向けての言葉だ。

鬱憤を晴らすために、突っかかって来る相手を殴り飛ばしているわけだが。その原因は、姫蝶に決まってる。



「(嫌いってわけじゃあなさそうだし。どうやって、認めれば良いのか分からないんだろうな。)」



まだ物足りなさそうな茨輝に、先に帰ると告げ一人で歩いている龍。

茨輝の気持ちも解らなくはない。けれど、龍には彼女を否定する理由がない。

匡と藤夜。二人が認めている人間をどうやって、嫌いになれば良いのか。考えるだけ無駄だ。


不意に、ポケットに入れていたスマホが鳴った。

画面を見てみると、知り合いからのメールだった。内容を見ると、予想した通りのものだった。



「サンキュ…っと。」



龍は折り返しのメールを送り、学校へは向かわず、鬼龍の倉庫へ足を進めた。