鈍く派手な音が響いた瞬間、龍は首を竦めた。
茨輝が殴った男が壁に立て掛けてあった鉄パイプにぶつかって、一緒に倒れ込んだからだ。
「…おい茨輝、程々にしとけよ。」
「るせぇ。」
「………。」
茨輝に聞こえない様にため息を吐いた龍は、視線を茨輝に殴られて延びている男に向けた。
男は隣の区の高校に通う生徒で女癖が悪いと噂されていたヤツだ。
なぜ龍がそんな事を知っているかというと、鬼龍の仲間が友人から、女をそいつに寝とられた、だとか相談を受けたと偶々聞いたから。
運悪くその男は、機嫌の悪い茨輝の前に現れ、更に命知らずに絡んできたのだ。
龍が気付いた時には、もう遅い。茨輝の拳が男の頬に決まった瞬間だった。
「懲りたら大人しくしとく事だな…。」
「あ゛?」
「何でも。」

