茨輝と別れた私は、まず理事長室のドアの前に立った。
ここに転校するにあたって、奴には一応顔を見せておいた方がいい。
私は息を深く吸って、ゆっくりと吐いた。
そして随分高そうな扉をノックした。
『失礼します。』
「―――……入れ。何て言ってねぇぞ、バカ娘。」
『あぁ、勝手に入っても良いのかと思いました、クソ野郎。』
扉を開けた瞬間聞こえた低い声に、何時も通り返す。
踏ん反り返って偉そうにコーヒーを飲むヤツこそ、この学園の理事長、柑子涼(コウジリョウ)。
『テメェが理事長なんざ世も末だぜ。』
「あんだと?お前こそ、転校初日に遅刻の上、女子に対して第一印象最悪ってどうなんだよ。」
『アレは向こうが悪い。』
「ホント、相変わらずだなお前は。」
『ふん。』
全然、教師と生徒の会話ではないそれに一段落付き、私はこれまた高そうなソファーに腰を下ろした。

