『……ん?迎えに来てくれたの?』


「偶々通り掛かった所を藤夜に頼まれたんだよ。先公の所に行くんだろ?」


『うん。』



案外、茨輝は面倒見がいいらしい。

背を向けて歩き始めた茨輝に、私は女を放って並んで歩く。



『茨輝。』


「あ゛?」


『ありがとう。』



ポカンと呆気に取られた様な顔つきをしてから、直ぐに不機嫌そうな顔つきに戻った。



「……此処からは一人で行けよ。」


『ん?』



暫く歩いていると、目の前の廊下の先に見えた理事長室と職員室のプレート。



「俺は先公が嫌いなんだよ。」


『分かった。ありがと。』


「……おう…。」



警戒心丸出しの茨輝に苦笑しながらお礼を言うと、怪訝そうに私を睨んでから背を向けてこの場を後にした。