「来ないねー…。」


「来ませんね。」


「匡が知ったら怒っちゃうかな…?」


「強制的に送り迎えが付くかもしれませんね。」


「わぁ。」



当たり前そうに言う藤夜に秋は顔を青くした。



一年B組。

ここは秋と藤夜のクラスであり、今日姫蝶が来る筈のクラスだった。



事前に姫蝶が来る事は解っていたが、一向に本人が来ない。



「また、迷ってるのかな?」


「電話してみましょうか。まだ寝てるのかもしれませんね。」


「もう十一時近いよ?」



教室内にある掛け時計の短い針はほぼと言っていいほど十一の所を差していた。後は長い針が三十度ほど動けば十一時になる。


藤夜は白いカバーを付けたスマホを取り出し、姫蝶の番号を探し出す。
そして掛けてみると、十回ぐらいコールが鳴った後に《……ん…。》と低い声が聞こえた。



「おはようございます、姫蝶さん。」