「良いのか?」
『何が。』
「髪とか。折角、変装して、」
『良いよ別に。隠しきれるものじゃないし。バレなかったら、言うつもりはなかったけど、あそこまで言い当てられれば隠しようもないから。』
「悪い。」
『何で、匡が謝るの。逆にアレは褒めないと、あの龍の洞察力は。』
「……。」
『もう別に逃げる気はない。今日、倉庫に行かなかったのは面倒だったし疲れてたから。明日は行くよ。』
「姫蝶。」
『何、……。…大丈夫、だよ。』
今日の夕方。
姫蝶をマンションの近くまで送っていった時の会話。
姫蝶の声には確かに疲労の色が見えた。だから、学校の屋上で言い合いはしたが、無理矢理倉庫には連れて行かなかった。
匡が姫蝶の名前を呼びながら頭を撫でて、顔の横に添えると、姫蝶は力を抜いた様な声で言った。

