「お前に兎や角言われる筋合いは無い」


思った通りの返答で、俺は少し自分の予想が当たった事が嬉しくて、自然と口が緩んでいた


「まぁそーっスね
…おい、蒼汰
お前一人で何やってんだよ」


ボールを蹴って一人で遊んでいたのは良いのだが、その蹴っていたボールに躓いて派手に目の前で転けやがった


「…っ、ひっく…ぼーるがぼくのいうこときいてくれないっ…」


半べそでボールに八つ当たりする幼児を初めて見たわ


「お前、男がそう簡単に泣くなよ~」


「…なっ、ないてっ、ひっ…く、ないもんっ…」


「嘘コケ馬鹿
目から出てるこの水は何なんだ」


袖で溢れ出る涙をぐしぐしと拭いてやってから、少し重くなった蒼汰を抱っこして立ち上がる


「おら、もう泣き止め」


「うんっ…」


しばらくその体勢でいると、ガールズトークが終了したらしいりりかが、おっさんの隣に座ると俺達を見て、ふふっ、と肩を揺らして笑った


「本当の兄弟みたいだね~」


「僕はあんな兄は嫌ですけどね」


かなり離れた所で今まで静かに本を読んでいた弟が、りりかの声でやっと顔を上げて反論を始める