縁側から大きな庭を眺めていると、どこからともなく秋風が吹き、俺達の頬をくすぐっていく


近くにある鹿威しの音が鳴り響き、日本の風流が感じられるこの庭が、りりかも俺も気に入っている


時折、庭で遊んでいる蒼汰を見ながら、後ろの座敷でガールズトークをしている、りりかの声を聞いていると、横から渋い声に呼ばれてそちらに目を写す


「おい、小僧」


何度もここに足を運んでいるというのに、謎にまだこのおっさんから、俺の名前を呼ばれた事がない



まぁ、名前なんて何でもいーけど


「何ですか、おとーさん」


「………その“おとーさん"とやらをやめろ」


「はっ??何で??」


意味不明な内容に、思わず敬語を使うのを忘れてしまった



「私はお前の父親でも何でもないからだ」


「その内なるんだから問題ねぇと思います」


「……私はまだ認めたわけでは無いぞ」


「え、そうだったんですか
初対面の時の言葉から、認められてると思ったんですけど??」


「………それはお前の勘違いだ」


じゃあ今の間は何だったんだ??


そう思ったのだが、おっさんのこれまでの行動から認めてはくれているだろう、と感じるので何も言わずにまた視線を蒼汰にやった


「おとーさん、素直にならないと、子供っていうのはわからないものデスヨ
特に娘となると余計に」


今だって認めていないフリをしたりして、このおっさんは本当に意味不明だ


優しいりりかだからこそ、おっさんの気持ちを汲み取ってやる事が出来るが、普通なら分からないに違いない