「おめでとう」


「ふふっ、ありがと」


自然と繋がれた手を私もぎゅっと握りすと、優美の隣にいた武蔵くんがもごもごと口を動かした


「何、どしたの??
お腹でも痛いの??」


優美同様、皆が武蔵くんに心配の色を向ける


「ちっげぇし!!
全然痛くねぇし!!」


と言うわりには、忙しないと言うか…落ち着きがない


「じゃあどうしたの??」



「……何かさぁ…やっぱマジで寂しいって!!
三人とも卒業とか悲しい!!」


武蔵くんの素直な心情が言葉となると、明るかった場の空気が少し暗くなった


「…まぁ、私もそれ思うなぁ
やっぱまだ高校生でいたいって言うかさぁ…」


「まぁねー、思ってたより高校生活って楽しかったもんね」


「うん…武蔵くんの言う通り、何だか寂しいね」


常にずっと一緒にいた皆とは、来月から別々の道を行く


それが人生だって頭では分かってるのだが、己の心が着いていかない


沈む空気の中、ある人物の素っ頓狂な軽い発言でそれが一瞬で消え失せた


「──んな落ち込む必要なくね??
一生会えねぇわけでもねぇしよ
いつでも時間合わせたらいけんだろ」


「翔くん…」


そしてその後に、“お前ら何言ってんだ"と付け加える


「……そっか!!そうだよな!!
俺が毎日優美ん家に行けば会える話だし、皆とは日を合わせればいっか」


「いや、私は毎日来られるのは流石に無理だからっ」


「ナイスだ清水翔っ!!
むーちゃんも偶には良い事言うじゃん〜!!」


むーちゃんとは結花が武蔵くんに付けたあだ名で、呼ばれている本人もなかなか気に入っていて、密かに優美にもそう呼ばれるのを期待していたりする…


そう言って、結花は大きくグッドサインを翔くんと武蔵くんにすると、ノリのいい武蔵くんも倍にしてその返しをした