「──……ねぇ、翔くん」
その日の帰り道、近くの公園で降ろしてもらい、冬に近づく気温を暖めるかのように、私達は手を繋いでマンションに向かう
「ん??」
「…勝手に話を進めてごめんね??」
今日決めた判断を後悔してる訳では無いが、二人にとって大切な事を勝手に決めた事に、少し後ろめたさがあった
「何で謝んの??
一緒に暮らす事はいい事じゃん」
「…けど、今みたいに一緒には暮らせないんだよ??
それに春からは私は大学生で、翔くんは高3でしょ??
受験もあって忙しくなるだろうし…きっと今よりもずっと二人でいる時間が減っちゃうんだよ…??」
既にもう決めた事なのに、こうして考えると何だか本当にあの答えが自分に合っているのか、分からなくなってきた
「ばぁーか」
悶々と悩んでいると言うのに、翔くんから返ってきた言葉は予期せぬものだった
「馬鹿って何よ〜…」
「大馬鹿もんだな、マジで
んなこと気にすんな
せっかく分かち合えたんだから、今よりも近くにいるべきだろーが」
「翔くん…」
「二人で会う時間が少なくなるなら、時間を見つけて電話でもメールでもすりゃあ良い話だろ??
そんときに考えればいいんだから、問題ねぇよ」
大した心配でも無かったかの様に、家の中に入る翔くんの背中目掛けて私が抱き着くと、バランスを崩した彼は私を抱き締めたまま、廊下に倒れた
「っー!!
いってぇ〜
おいっ、りりか…」
「ありがとう翔くん!!
もうホント大好き!!」
翔くんの言葉を遮って滅多にしない気持ちを伝えると、拍子抜けたような表情をする翔くんも構わずにまたぎゅっと抱きしめた
「……ちょ、マジで襲われてぇのかよ…」
翔くんがポツリと呟いた独り言は、有頂天だった私の脳には届きもせず、静かに消えていったのであった