結花ちゃんは俺に聞くでも無く前の席に座ると、買いたてのプラペチーノを啜ってから、ふぅ、と小さな息をはいた
「案外辛いものでしょ、好きな人に好きな人がいるのって」
先程とは打って変わって初めて聞いた彼女の真剣な喋り方と、まだ何も話してもいないのに俺の心を読み取られていたことに目を見開いて驚いた
「ははっ、そんなに驚くー??
…まぁね、りりかの友達だから粗方の事は知ってるよ」
「そう…」
「こんな私でもいちおう、しゃちょーさんと同じ気持ちを味わったことはあるから…
…振り向いてもらえないのって悲しいし、寂しいよね」
そう言って弱々しく笑う彼女は、俺の知っている常に元気に笑う結花ちゃんではなかった
「…そうだね
君が言っていた事は正しかった…」
前に俺の会社に来た時に昼ドラの話をした頃を思い出す
その時の彼女の言葉はやけに俺の中で響いたのだが、きっとそれは彼女が昼ドラと同じ体験をしたからであろう、と今ならわかる
「でもね、しゃちょーさん
無理に忘れなくていいよ
ゆっくり時間をかけると少しずつだけど、“良い思い出"になるから」
ニコッと人懐っこい笑顔と彼女の言葉で、俺の気持ちが軽くなった気がした
──そうか、焦らずとも時間が解決してくれるのか…
「ありがとう
君は優しいね」
俺が褒めると、彼女は褒められた事に頬を少し赤くさせて、恥ずかしそうに微笑んだ


