真っ直ぐに見つめてくる春樹を、私も見つめ返す


「今回の縁談は白紙に戻った
だから、りりかは晴れて自由の身だよ」


にこりと優しく微笑む春樹だが、私はその笑顔に笑って返せない


なぜなら私は、まだ彼からの告白の返事をしていないからだ


もう少し時間を空けて、心の準備をしてから返事をするつもりでいたが、まさかこんなにも早くにそれが訪れるとは、思ってもみなかったのである


だが多分この機会を逃してしまうと、春樹とはこの先一生会うことはないだろう…



──だからこそ、こんな中途半端な返事はいけない


目の前の春樹はコーヒーを一口飲むと、何かを話そうと口を開けた私に視線をやった



「…春樹…あの、ね…??
春樹の告白の返事をしようと思って…」


私の気持ちに揺るぎはないけれど、好意を断るという事に、申し訳ない気持ちでいっぱいになる


また彼の顔が見れなくて視線が下に下がると、その視界に春樹がコーヒーを置いたのが見えて、彼が真っ直ぐに私を見てくれている事に気づいた


「春樹」


名前を呼んで、俯いていた顔をあげる


だって、私の気持を既に気づいていながらも、そんな私のことを好きだと言ってくれる、勇気のある彼から、目を背けてはいけないと思ったから