数時間経ち、ようやく俺が落ち着くと、りりかは俺に全てを話してくれた
父親のこと、婚約者のこと、そして俺や周りの人達を守るが故の今回の言動
何も気づいてやれなかった自分が、心底情けなく愚かに思えた
彼女はこんなにボロボロになりながらも、他人の為に動いていたのにも知らずに、俺は自分の事で手が一杯であった
「……ごめんな、りりか
俺、何にも気付いてやれなくて…」
だからこそ、彼女に頼って貰えなかったのだと、今回の事で身にしみた
「ううん、それは違うよ
今回の事は、私の家の問題だったし、迷惑をかけちゃいけないって思ってしたことなの…」
思い返せば、いつものりりかじゃない行動が多々見られていたが、それは疲れているせいだと勝手に思っていたのがいけなかった
「りりか、過去の出来事は変えることは出来ないけど、もう次からこんな事になる前に俺に一言でも言って欲しい…」
確かにまだ経済力や、社会的知識も全くない無力な高校生だが、彼女の苦しみを少しでも負うことが出来る
「…ありがとう、翔くん
もうその言葉だけで十分だよ」
彼女自ら抱きしめてきて少しびっくりしたが、俺は優しく壊れ物を扱うかのように抱き締め返した
また始まる彼女との幸せな時間を、今度こそ失わないようにしようと、強く心に決めた
──終──