「そ、そんなはずありませんっ…!!
父は、あの人は、私が邪魔で仕方がないはずですっ…!!」


母が亡くなったあの日から、父にとって私は余計な存在


だからこそ、父は私に冷たいし、いつも私を小馬鹿にして睨む


「先程も申し上げたように、会長は感情があまり出にくい方です
ですが、りりか様を大切にしておいでです
そうでなければ、今回の会社に大きく関わる縁談を、白紙になどなさいません」



「……信じられません…」


積み上げられてきた父への思いは、そう簡単に崩れるはずがない


「会長に似て、頑固な人ですね」


篠原さんは車を停車させると、バックミラー越しに私をチラリと見て溜め息をつくと、車を降りて後頭部座席のドアを開けた


「ですが、ここを売らずに置いておいたのは、紛れもなく会長でございます」


あまりにも信じがたい会話で気付かなかったが、外は見慣れた風景で、目の前には私がもと住んでいたマンションがあった


「…てっきりもう、売り払ってたんじゃ…」


父が私を呼び出した日、父は私に前の生活に戻れない、と言った


本当にそうだろうと私は信じていた為、ずっと私が帰る場所は春樹のもとしかないと思っていた