「あとの事は気にするな
私に任せて…好きにしていろ」


父は私の返事を聞くこと無く伝票を持って、私の元を離れていく


「えっ、あのっ…!!」


私も父の背中を小走りで追い店を出ると、外には春樹と篠原さんが立っていた


父が電話をかけていたのは、春樹を呼び出すためだったらしく、春樹の自家用車にはエンジンがかかったままだ


「芦田会長、お久し振りです」


「あぁ、パーティー以来だな」


「はい、お元気そうで何よりで御座います」


「お前に少し話がある
小娘の事をお前に預けてると言ったが、気が変わった
詳しい事は後日連絡する」


そう言って、父は篠原さんに開けてもらったドアから車に乗り込むと、私達を見向きもせずにこの場を去っていった


私と会話した最後の父の言葉も、春樹に話していた言葉も、どれも、今日の父はまるで別人のような素振りをみせていて、私は動揺を隠せないでいた



それは春樹も同じらしく、私が話しかけるまで彼は父が去っていった道をしばらく見つめていた



何かが変わる、そう感じられずにはいられなかった