──放課後、優美と一緒に上の階の2年生がいる教室に向かった


こうしていると、付き合っていた頃を思い出す


「あれ、優美とりりかちゃんっ♪
俺に会いに来てくれたの♪??」


「何言ってるの??
清水くんに会いに、よ」


二人の仲の良い会話を、いつもなら楽しく聞けるのだが、今はそんな悠長な事は言ってられない


いったいどんな感じに切り出せばいいのか、ずっと頭を悩ましていた


「何だよ~、ちぇ~
ほらー、翔~
お前どれくらい寝てるつもりだよ!!
お客様ですよ~」


前の席というのに、正々堂々と机に突っ伏して寝ている翔くんが、不機嫌そうに顔をしかめて起きると、胸が高くなる


「ほら、起きろ!!
優美とりりかちゃんが来てんだぞ!!」


そう武蔵くんが言うと、翔くんは目を見開かしてガタタンと椅子を倒して起き上がった


あまりの動揺のしように、私の頬が自然と緩む


「あ、じゃあ、私達は先帰ってるね
…頑張ってね」


小さくそう私に告げると、優美は武蔵くんを引っ張って先に帰っていく


「え、え??
優美っ、ちょっとっ…!!」


あまりの展開に私は着いていけずに、小さくなっていく二人の背中に手を伸ばすも、優美は肩越しに、にこやかに微笑み階段を降りていった


「嘘…」


私の独り言だけが、虚しく辺りに響いたような気がした



それまで、どんな会話をしようかと、いろいろ考えていたのが、今では何処かに飛んでいってしまって、翔くんと私の間には気まずい雰囲気が漂っている


これではいけないと思い、私から口を開いた


「……あの…、私が倒れた時、運んでくれてありがとう」


「え…??
あ、うん、別に…」


そして、また沈黙…


来たときには沢山いた生徒は、部活や帰宅やらで、もう二人きりになっていて、グランドから聞こえる部活をしている声が、静かな教室に大きく響いている