最近ふと、思い出したことがあった
りりかは親とは一緒には暮らしていないということを
母親が亡くなっていることは、彼女が部屋に遺影を置いていた為、聞かずとも知っていた
しかし、彼女の父のことについて、翔は何一つ聞いたことがなかった
唯一、彼女の知らない事と言えば、それである
父親がどういった人なのか全く知らないと言うことは、りりか自身が話したくないと思っていたからであろう
そして自分自身も、今の今まで、その事について何も気にしなかった
逆にそれが、今では知りたくてしょうがない
翔は、いつもあまり使わない脳を、フル回転させて考えた
すると、一つの仮説を思い付く
もし、彼女りりかが、父親と接点があり、今も何らかの関わりがあるとする
唯一の親から、自分の事で何か言われたとして、その内容が二人の関係に芳しくないものだとすれば──
自分が振られた理由が納得できる
どう考えたって、あの振られた日のりりかの態度から、彼女の意志で振られたのではないと、日が増し頭が冴えるに従ってわかった
だとすれば、この仮説が一番有効である


