「…別にアンタに貰わなくても、間に合ってる」
いちおう否定の言葉を翔は口にするが、本心ではないことくらい萩原先生は知っている
今朝、萩原先生はりりかから感謝の気持ちを込めてと、本当は教師として貰ってはいかないのだが、こっそりと受けったのだ
何故ならば、そのチョコレートを翔に、自分が間に渡そうと思ったからである
どうやら、その作戦は上手く行ったらしく、いつも変わらない無表情の翔の表情が、少し変化した
それを見た萩原先生は、ふっ、と小さく笑うと、“じゃあな”と告げて隣を立った
一人になった翔は、綺麗にラッピングされたチョコレートの紐を解いて、ぱくりと一口食べた
口の中にじわりと広がる甘さに、ここ最近の自分の行動を思い出した
りりかと別れた日、絶望的でもう何もかもがどうでもよくなった
いったい自分の何処がいけなかったのか考えたが、思い当たる節が多すぎて頭が萎えるだけであった
だが、それでも諦めきれないし、彼女の存在は自分の中で確実に大きくなっていた