「──帰っちゃったね、春樹」
ソファーで私があげたチョコレートを、美味しいそうにニコニコと頬張る彼に言うと、ちらりと少し私を見たが直ぐに視線を外した
「…りりかは爽がお気に入りなんだね」
「へっ??
お気に入り??」
思ってもみなかった言葉に、私は目をぱちくりとする
「そう、俺より爽が良いみたいだね
さっきも頭をぽんぽんされて、嬉しそうにしてた」
「…………」
あれ…もしかして、この人…嫉妬…??
と言っても、春樹は私みたいなのを相手にしない事くらい知り得ているので、ただの恋愛とはまた違う独占欲のほうでだと思うが…
「まぁ、別にいいけど」
なんて言っての蹴るが、口は尖っていて明らかに拗ねているのがまる分かりである
「…ふふっ、春樹でも拗ねることとかあるんだね」
この人は、完璧な人だと勝手に思い込んでいた
相手の気持ちに敏感であるが故に、それを上手く利用して話をする
仕事も完璧で、彼自身が失敗をした事を聞いたことがない
いつも笑顔で、大人で、子供じみたことはしないだろう、と
だけど、彼もやはり人間なんだと、その拗ねた顔から見受けられた


