「ちょっと、お前べたべたしすぎ」


そう言って、春樹は私を自身の胸へと抱き寄せる


思わず、その行動にどきりと心臓が鳴る


「…別にそんなことは無いだろう
ただ礼をしただけだ」

「んじゃあ頭撫でる必要ないよね??」


といつもより食って掛かる春樹は、ご機嫌斜めの様子で、私は二人の間で喧嘩にならないかと、おろおろと不安になった


「ふっ…まぁ、そうだな
今回の事は俺に非がある」


ニヤリと何故か笑った爽さんは、“帰る”と言って玄関へ直行する


「えっ、爽さんっ
もう帰っちゃうんですか??」


するりと春樹の腕から出ると、爽さんを追って私も玄関へと向かう


「あぁ、あまり邪魔をするとコイツの機嫌を損ねて、仕事に支障を来すやもしれないからな」


「俺はそんなへまはしないけどなぁ」


当の本人は他人事のように軽く受け流し、もう機嫌は直っているようにみえる


「どの口がほざくか
ではな、りりか
いろいろと世話になった」


そんな、“世話になった”と言われる程の事は、全然してないんだけどね


だけど、爽さんが小さく笑った為、私も嬉しくなり微笑むと、彼はまた私の頭をぽんぽんとして帰っていった