「お前、わかってて言っているな」

ぎろりと爽さんが睨むと、にこりと春樹は微笑む

「だって、楽しみなんだもーん♪」

「ふふっ、夕飯が終わったら渡すね」

私は夕飯を作る前だったので、キッチンに戻りいつもより一人分多い夕飯を作り出す


その間、春樹達は各々自分がしたいように過ごしていた


夕飯は本当に簡単な物だったのにも関わらず、爽さんが褒めてくれて、私は顔が赤くなったのを二人からからかわれた


そして、待ちに待った、チョコレートを渡すとき──


「はい、どうぞ」

二人に出来たばかりのバレンタインチョコレートを渡す


本命とか、そんな物ではない


日頃の感謝を込めてだ


本当に渡したい人には、渡す事が出来ないことが悲しい


「なぁんだ、俺だけじゃないんだね」

ぷくーと頬を春樹は膨らし、子供のように拗ねた


「だって、爽さんにもお世話になってるから…駄目だった…??」


「いや…駄目とかじゃないけど~…」


私が俯いてしまうと、もごとごと口ごもる、春樹


「そんなことはない」


そんな私の頭を優しく爽さんが相変わらずの仏頂面で撫でてくれる