学校に着くとまず、萩原先生のいる数学科準備室へ

──コンコン

「失礼します」

これから毎朝、学校に着くとここに持ってくる事になった

萩原先生は既に、コーヒーを片手にパソコンをいじっている

「お、岡本か
わざわざ朝から悪いな」

「いえ…あの、翔くんは来そうですか??」

いちおう土日の間に、優美と武蔵くんにこの話をしておいた

やっぱり、二人とも、このままの翔くんではいけないと思っていたようであった

「う~ん…どうだろ…
先生もあれから、お家の方に連絡をしてみたんだが留守でな
俺の留守電を聞いてくれてたらいいんだが…」

「そうですか…」

少しの沈黙が私たちを包み込む

これ以上、話していても結論が出そうにない

“武蔵くんが引っ張ってでも連れてくる”と豪語していたが、果たして上手くいったのだろうか…

不安だけが頭を駆け巡っていたとき、ケータイのバイブがポケットで震えた

「もしもし、優美??」

朝からかかってくるとは、思ってもみなかったので驚いた

いったい、何かあったのかな??

『おはよう、りりか
武蔵、上手くやったよ!!
清水くん、学校に来た!!』

電話の向こうで、わーわーと騒がしい声がするのは、きっと武蔵くんと翔くんだろう

私は先生に満面の笑みで、グッドサインをみせた

彼を久しぶりに見れることが、どんな形であろうと嬉しかった