「そっか…
いやでもまさか、この商談が成立してしまうとは思わなかったな」

「…どういう事ですか??」

「実はね、俺、あまり今回の話は乗り気じゃ無かったんだ
りりかの父親が、どうにも俺とは合わなくてね」

「…はい」

「だからどうにかして、この話が無かった事にしようと思って、実の子から俺の婚約者を出すように、縁談を持ちかけた
だってほら、あの会長は息子しかいないだろう??
…まさか、隠し子が娘だった時はしてやられた気分だったよ」

はははっ、と空笑いをした

「でも、それがりりかだって知って、驚いたけど嬉しかったんだ
また、会えると思ってね
だから、無理矢理だったけど、引き寄せてしまった
…本当に、申し訳ない」

大企業の社長が、凡人の女子高生に頭を下げているこの絵図は、なんとも可笑しかった

「いえっ、頭を上げて下さい…!!」

何とも思っていないと言ったら嘘になる

後悔は腐るほどしている

だけど、翔くんや皆の為だから

「……うん、ありがとう」

「いえ…
でも、近藤さんがお相手で良かったです」

知っている人が、婚約相手でよかった