「これから美容院へ行ってもらいます
あちら社長とお会いするのにも、いろいろ御準備がございますので」

「…はい」

もう、好きなようにして構わないよ…

翔くんと別れた時から、どうでもよくなってしまった

どう足掻いたって、私は父には逆らえないのだから

──数十分後、都心にある高級そうな美容院に着いた

「いらっしゃいませ
お待ちしておりました、岡本様」

「えっ??」

私、予約なんてしてないよ…??

「私が、御予約をしておきました
料金など全ては、こちらでお支払い致しますので、御安心下さい」

「…はい」

鏡の前に座ると、すぐにヘアーアップさせられる

それが終わると、一着の高そうなワンピースが手渡され、着替えるようにと指示を受けた

黙って更衣室で着替えた私は、鏡の前の自分に唖然となる

まるで、自分ではないようだ

こんな綺麗に着飾った事は生まれて初めて…

「よろしいでしょうか??」

カーテンの向こうから、スタッフの人が話掛けてきた

「あ、はい!!」

手放し掛けていた意識をこちらに戻して、更衣室を出る