「遅いぞ、篠原
いつまで私を待たせる気だ」
そう、ギロリと篠原さんを睨みつけた
外見は数年前に会った時より少し、老けたように見えたが、この傲慢な性格は健在のようだ
「申し訳ございません、会長」
それを軽く交わす篠原さんが、気の毒に思えた
言い方ってものがあるでしょ…
「アレの話は言ってあるのか」
「はい、先ほど車内で」
「そうか、なら話が早いな」
それまで私に見向きもしなかった父が、私を見つめてきた
「おい、お前」
私は実の父親からは、そんな呼び方の存在であったな、と今思い出される
そんな呼び方の存在の私は、何も発する気など毛頭ない
父とは、必要以上は話したくはないのだ
この人は、人の意見など聞かないから
「お前、近藤グループの社長と結婚しろ」
そう思っていたのに、予想外の事を言われて驚きを隠せなかった
「はっ??」
何それ…
「私はどうしても、あの企業と手を組みたいのだ
それなのに、あちらは首を縦に振らない」
ムッと怒ったかの様に、眉間に皺を寄せる


