初めて父親の会社に来たな

天までも高く建っているビルを、私は睨むように見つめた

「どうぞ、こちらです」

慣れた手付きで父親の元へと案内される

通り過ぎる人達は皆、場違いな高校生の私を好奇の目で見つめてくる

エレベーターに乗り込むと、最上階へと一直線だった

チンと静かなエレベーター内に鳴り響く

とうとう、会ってしまう…

開かれたエレベーターの扉には、大きな、如何にも社長室だと言わんばかりの、扉があった

ゴクリと唾を飲み込む

──コンコン

「会長、篠原です
只今、お連れしました」

緊張をして顔が強ばる私を知っていながらも、何も一言もかける事もなく、篠原さんはさっさと自身の事務をこなしていく

「入れ」

数年ぶりに、忘れ去られていた父親の声を思い出した

相変わらず冷徹な声だ…

背筋に一筋の緊張の汗が流れた

──大丈夫、これが終わればいつもの日常に戻るのだから

震える手をギュッと、気づかれないように握って、父親のいる部屋へ足を進めた